寄贈コラム

ITを活用して「情報を見える化」しよう

食品衛生のプロが教える「飲食店のHACCPがよくわかる本」より

HACCPの導入においては、衛生管理に関わる情報の「見える化」が求められます。情報の「見える化」を効率的に行う手段の一つとして、ITの活用が挙げられます。お店の経営・運営に関わるITの活用について紹介します。

1.お店の情報を「見える化」して管理を効率的に

お店の運営では、様々な場面でITが活用されています。中でも活用が進んでいるのは、お店の販売に関わる作業を効率化するPOSレジです。POSレジでは、お客様の会計、売上の集計、仕入・在庫の管理などを行うことができます。

POSレジで販売情報を「見える化」することのメリットの一つは、過去の売上状況から、翌日以降の売上が予測しやすくなることです。POSレジでは、「いつ」「なにが」「どれだけ」売れたか、「いつ」「なにを」「どれだけ」仕入れたかを記録します。記録された情報から、商品・曜日・時間帯・月別・日別など、いろいろな角度からお店の状況が分析できるようになり、売上予測に活用することができます。

売上予測を行うことで、余分な仕入をすることなく、適正な在庫量を維持できるようになります。適正在庫が維持できれば、消費期限切れに伴う廃棄ロスを最低限に抑えることができます。また、仕入情報を正しく記録・把握し適正在庫を維持していれば、過って消費期限切れの材料を扱ってしまう、長期間保存により細菌が増殖してしまうなど、衛生管理上のリスクを低減することにもつながります。

近年では、仕入・在庫情報をバーコードやQRコードを利用してスマートフォンで簡単に入力するなど、パソコン操作に不慣れな方でも活用できるサービスが出ています。さらに、POSレジと併せて、オーダーエントリーシステム、会計システムを活用すると、仕入・在庫から、注文受付、会計、決算まで、お店の運営に関わる多くの作業負担の軽減ができるとともに、お店情報の「見える化」が実現できます。

2.キャッシュレス決済導入による現金管理の手間削減

近年、キャッシュレス決済の導入が急速に進み始めたという印象があります。その一つが、「〇〇ペイ」をはじめとするQRコード決済です。QRコード決済は、お客様が持っているスマートフォンと、お店にあるQRコードで、簡単に支払いが行えるという手軽さが好評です。

キャッシュレス決済といっても、いくつか種類があります。代表的な決済方法は、QRコード、ICカード、クレジットカードです。いずれの方法も、スマートフォンを活用して決済を行うことも可能です。キャッシュレス決済の導入は、支払い手段の選択肢が増えるということで、お客様にメリットが大きいです。

お店側の視点で考えると、もっとも大きいメリットは「現金管理の手間が省ける」ことです。お客様の会計をする、事前にお釣りを用意する、日次の締め作業で現金を確認するなど、現金の扱いは日々手間がかかる作業です。キャッシュレス決済を導入し、POSレジと連動することで、これら現金管理の作業は大幅に軽減できます。

現金の取り扱いは、衛生管理のリスクの一つです。細菌やウィルスの感染経路の一つが「人の手」であり、現金は不特定多数の人が触れています。会計などで現金を取り扱うたびに感染のリスクにつながるため、入念な手洗いが必要となります。現金に触れる回数を減らすことができれば、細菌やウィルスの感染リスクを減らすとともに、手洗いの手間も削減することができます。

これまで、キャッシュレス決済を導入するには、決済用端末を購入する初期費用がかかり、導入が見送られることもありましたが、新たに普及が進んでいるQRコード決済は、決済用端末は必要なく、初期費用がほとんどかかりません。決済手数料がかかるものの、初期費用という点ではキャッシュレス決済導入のハードルが下がっています。

今後、キャッシュレス決済の普及がさらに進んでいくことが予想される中、多様な決済手段があるかどうかは、集客にも影響します。お店側、お客様側、双方の立場に立って、キャッシュレス決済の導入を検討しましょう。

3.衛生管理に関わる情報の管理

HACCPの導入にあたっては、衛生管理に関わる情報の「見える化」が求められます。情報の「見える化」のポイントは、正確に記録することと、記録した情報を必要な時に簡単に見られることです。

「見える化」する情報の一つは、調理マニュアルです。衛生管理のポイントを明確にした調理マニュアルは、衛生管理リスクの低減に欠かせません。マニュアルは紙で管理すると、場所をとったり、探す手間がかかったりするため、電子データ化しタブレット端末やスマートフォンで参照することができるようにすると効率的です。また、誰が見ても間違えない手順とするためには、マニュアルを動画で作成するというのも効果的です。最近では、動画マニュアルを作成するサービスも普及し始めています。

もう一つの情報は、衛生管理チェックリストです。配達食品のチェック、冷蔵庫・冷凍庫のチェック、設備のチェックなど、日々管理する項目があります。毎日のチェック結果をしっかりと保管し、問題があった時に過去の記録を遡れるようにしておくことが重要です。管理の手間を削減するためには、電子データ化することが効率的です。電子データ化の方法はいくつかありますが、初めはExcelなどで記録する方法や、紙でチェックした結果をPDFでスキャンして保管する方法でも良いでしょう。記録しやすさを考えた場合には、お店独自の衛生管理用システムを作るという方法も考えられます。

近年では、IoTやAIの技術が発展しています。将来的には、温度管理はセンサーを活用して自動的に記録・温度調整する、食材はカメラやセンサーで品質状態をチェックする、チェックリストは音声認識で手を使わずに記録するなど、衛生管理のチェック体制の自動化・効率化が実現されることも期待できます。

この記事を書いた人

IT導入・活用のプロ・ITコンサルタント(中小企業診断士)

高橋 信(たかはし まこと)

WBオフィス 代表

対応領域
・システムエンジニアの経験を活かしてITを専門とした経営支援
・ICTの活用を中心とした事業拡大・生産性向上のアドバイス
・ホームページやSNSを活用した情報発信とアクセス解析
・POSシステムやキャッシュレス決済の導入
・クラウドサービスを活用した情報管理の一元化
・生産/販売/在庫管理システムの導入
・データ収集と分析手法の提案

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